steak misono ginza interior
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ステーキみその銀座店内装
 

インテリア / 遠景

  鉄板焼きステーキのレストラン、グリルみその神戸三宮本店につぐ銀座店の内装および設備設計である。当レストランの入居するビルは、銀座の中心街、みゆき通りと並木通りの交差点に建つ複合テナントビルである。ビル内部は、カーテンウオールのガラス面に3方向を囲まれた開放的な空間となっている。今回も三宮本店と同じく、8階が入居フロアとしてクライアントによって選択された。しかしながら、このビルは、各階の階高が一般の中層ビルより高く設定されているため、8階がフロアレベルですでに地上30mを超えており、また、ビルの面する街路幅が狭く、さらに街路を彩るネオンの位置と量が限定的であるため、銀座店において、三宮本店で試みたような店舗空間と街路が緊密な関係をもつようなデザインは難しいように思われた。代わりに、店舗の位置が高いことの利点、すなわち汐留地区のビル群や東京タワーなどの遠景を、周囲のビルより頭ひとつ飛び出た位置から、空中に浮いた感覚で楽しむことができる点に着目することにした。

 今回も、銀色に輝く厚い無垢の鉄板に対して、コックがパフォーマンスを行う調理台ならびに料理の保温プレートとして、そしてこのレストランの「伝統」の象徴として最大限の敬意を払い、インテリアの主役として印象的に見せようとする点、フード内に収めた照明の光を鉄板に反射させ、さらにこれを天井に貼った金箔クロスに反射させながら、客とコックを光で彩られた空間におこうとする点など、デザインの基本方針については神戸本店の考え方を踏襲した。その上で、銀座店のオリジナルな空間を実現するため、以下のポイントに留意した。まず、間口が狭く奥行きが深い平面形状を生かすため、主鉄板をカウンタータイプの長い形状としながらも、隣接する客に気づかうことなく落ち着いてゆったりと夜景を見ながら食事ができるように、鉄板の平面形状にわずかな曲率をもたせた。次いで、銀座の遠景を楽しむために、ガラス面を通した開放性をできるだけ妨げないよう天井内にフード全体を収めた。さらに、光を反射させない部位においても、インテリアの背景としてふさわしい質感をもたせ内部全体に緊張感をもたせようとした。これは主に、濃グレー色から黒色系色に抑えた壁の石積みとカーペットの材料とディテールの選択に表われている。これらにより、銀座店が、落ち着いてゆったりと食事のできる静かな空間となることを意図した。

小澤 丈夫  

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